
インド→チームラボ→椎茸で起業。肉断ちしてわかった「おだし」の意外な魅力
この記事は、oh! dashi竹村さん(@kenttto)のamiライブ配信の書き起こしです。
株式会社椎茸祭 代表取締役 竹村 賢人さん
amiファシリテーター町田(以下、町田)
まず竹村さんのプロダクト「oh! dashi」は、「誰の」「どんな」課題を解決するものか、お話を伺いたいと思います。
椎茸祭 竹村さん(以下、竹村)
肉や魚を食べられない人にでもうまみを感じてもらうような、精進だしをつくっている会社です。
町田
実際に、先月のweekly ochiaiで取り上げられていましたね。
竹村
そうなんですよ。飲んでいただきました。
町田
すごく美味しいおだしです。
このあと、カンパニーページに注文できるリンクを貼っていただく予定です。
竹村
ぜひお試しください。
町田
今日は、竹村さんがどんな方なのかをお聞きしたいと思っています。
まず竹村さんの自己紹介をお願いします。
竹村
私は竹村と申しまして、31歳になります。
東京の文系の大学を卒業して、NTTコミュニケーションズという大手の堅い会社に入りました。
そして赴任先の仙台で震災に遭い、「これは一念発起したほうがいいな」と考えるタイミングが訪れまして、退職後インドに渡りました。
インドでプログラマーとして就職し、1年ぐらい経ったあと、連れて行かれる形でベトナムに行ったんですが、その後1年ほど経って会社がなくなり、チームラボに入社し、今は「椎茸」という感じです。
町田
いろいろと聞きたいことが多すぎて、混乱しているんですけども、要点を絞ってお聞きしたいと思います。
まず、新卒で入った会社を辞めてインドに行かれたというところについてお聞きします。
インドに行かれたきっかけ、は何だったんですか?
竹村
インドに決めたきっかけ?
※本文中の写真は、amiライブ画面のキャプチャーです
町田
一念発起をして、新卒後入った会社を辞めたきっかけをまずお聞きしたいです。
インドに渡ったきっかけ
竹村
辞めるところ、そこはなかなかネガティブな話ですね。(笑)
大きい会社に入ったものの、あまりやることがなかったですし、あまり役立てている感じもしなかったんです。
「会社辞めたいな」と少し思っていたものの辞める勇気もなく、自分も何かスキルがあるわけでもなかった。
やりたいことが超あるわけでもないから、きついなと思っていた。タイミング自体は実際はなかったんですよ。
だけど震災を契機に、「どんなに善良な人間でもあっさり、突然そのタイミングが訪れるんだな」と思ったんですよ。
「どんなにいい人でも、死ぬときは死ぬし、生き残るときは生き残る。めちゃくちゃえぐい自然の摂理の上に我々は立っているんだな」と認識して、これならしっかり生きたほうがいいなと思ったんです。
「うおー!」「やりたいことやろう!」みたいな生き方をしようとと思って、その時はインドに行きたかったので、インドに行って就職しました。
町田
震災が起こったあと、陸路で本社まで行って辞表を出したんですよね。
竹村
そうですね。そこの話は問題があるので話すのはやめます。(笑)
町田
次にインドにフォーカスしてお聞きしたいです。
勢いのあるBRICsの中からどこかに行きたかったと事前にお聞きしていたんですが、その中でインドを選んだ理由は何だったんですか?
竹村
そもそもインドに行こうと決めたのは、BRICsがその頃すごく流行っていたという背景があります。BRICの4か国、ブラジル、ロシア、インド、チャイナの人口ピラミッドを見比べると、インドが圧倒的に美しいんですよね。
全く高齢化する感じもしないし、人口も多いから、「いや、どう考えたって何年かしたらインドが1強でしょ」と思うぐらいにきれいでした。
子どもが非常に多いうえに、老人はすごく少ないんですよ。平均年齢が60歳ぐらいなので、きれいな形になっている。
「これはヤバいな」と思っているときに、『スラムドッグ$ミリオネア』という映画が当時やっていて、「うわー、ヤベえ、インド」って思ってインドに旅行に行ったのがきっかけです。インドしか海外に行ったことないので、「働くのもインドでしょ」という感じですね。
町田
なるほどと言っていいのか分からないですが、それがきっかけだったんですね。
竹村
そうですね。
町田
次に、「遺書を書いてインドに行った」という話もお聞きしていたんですが、それはどういう話ですか?
自分の懸けられるものは「命」だった
竹村
遺書を書いてインドに行ったんです。ちょっと怖かったんですよ。
旅行でもけっこう大変なのに、住むとなると、ちょっとひよっていました。
万が一僕が死んでも、親とかが気づけないと思ったんですよ。
親は、facebookや携帯などの連絡手段を持ってないので、死んだとき困るだろうなと思って、遺書を書いたんですよね。
カジュアルな感じで書いたんですけど、「死んだときにお葬式でお金かかるし、現地で燃やしたほうがお金かからないらしいから、インドでよろしく」みたいな遺書を書いて行きましたね。
町田
インドが距離的に遠いということや、自分が死んでも親が分からないという事情があると思うんですが、やはり「命を懸けて」という思いもあったんですか?
竹村
まさにその話をしたかったです。
学生時代に自分が漠然と思っていた不安は何かというと、「自分には能力がないし、自信がないから自由になれない」という不安だったんですよ。
つまり、「何かがないから自由になれない」という不安がすごいあった。
でも、本当は全く違っていて、能力がないって自分で規定しているからこそ、懸けるのものは大きいほうがいいなと思ったんですよ。
僕はギャンブル好きなんですけど、能力がめちゃくちゃあれば、ちょっとの懸け金でも戦えます。でも、能力がない人間にとって懸けられる最大限は、おそらく命。
フィジカルな部分で懸けられる値を最大限にして、何かに投じたほうが得られるものが大きいんじゃないかという思い込みがあって、「これはマジで死ぬリスクがあるところに行かないと駄目だな」と思って、インドに行きましたね。
町田
自分が一番懸けられる、価値のあるものが「命」だったと。
竹村
だって、懸けられるものってほかにない。別に何でもない人間だから。
町田
実際にインドに行かれて、エンジニアとして就職したんですか?
竹村
そうですね。プログラマーになりたいと思って入社しました。全然プログラムも書けないし、英語も話せないので、ニコニコしていました。
町田
笑っていた。
竹村
そうそう。ずっとニコニコして。
町田
そこから初めてプログラミングと英語を学び始めたんですか?
竹村
そうですね。そのあとに勉強させてもらいました。
町田
実際に、自分の懸けられるものを全部懸けて飛び込まれて、得られたもので、一番大きいものはなんでしょうか?
竹村
シンプルに「大丈夫だな」みたいな気持ちにはなりますね。
インドで英語も話せないし、プログラムも書けないのになぜお金がもらえるかというと、「感じがいいから」なんですよ。
朝、最初に来てニコニコして、「Hello. Hello.」って言うだけですが。なかなかいないんですよ、そういうインド人は。
町田
そうなんですか。(笑)
竹村
インド人からすると僕、「あの日本人けっこういいやつかもしれないな」みたいに印象がいいらしいんです。
その「いいやつ」って思われるだけで食べていけるという自信がつきました。どの業種でもそれなりに食べられるんじゃないかと。
町田
今は何とかなるなという自信がある。
竹村
何とかなる、何とかなる。だいたい何とかなる。
町田
コメントもたくさん来てる。
竹村
おだしとか椎茸の話をしてないですね。
町田
インドのどちらに行かれたんですか。
竹村
プネというところですね。
町田
そこは旅行で行かれた?
竹村
旅行で行ったのは、デリー、アグラ、ジャイプール、ジャイサルメール。
ジャイサルメールはパキスタンの国境のほうなんですけど、その辺りをぐるぐる回ってました。
町田
コメントも適宜拾いつつ、なぜインドの体験が椎茸につながったかというお話も伺いたいです。
「おだし」の魅力とは
竹村
インドにいるときに、ベジタリアンになろうと思ったんです。ベジの人は多いし、ベジのご飯もすごく多いので、なるべく肉を食べない生活をしようと思いました。
「絶対肉なし」みたいな、厳密に「だし等も含めてなし」というわけじゃなかったですが、肉をなくす生活をしてみると、やっぱり肉が食いたくなるんですよ。肉がないとうまみがないのですごくお腹が空くんです。
だから、そんな中でお腹に溜まるものは何かなと思ったときに、キノコ類はすごくよかったんですよ。めちゃくちゃキノコが旨いんですよね。
ベジの人はキノコをめっちゃ食べてて、「キノコすごいいいな」って感覚的に思ったんですね。
しかもインドの人口は40%ぐらいがベジタリアンなので、ベジタリアンの人がすごい喜ぶものをつくるのが大事だなと思いました。
でも、日本のだしってあごだしとかかつお節といった動物性のものが多い一方、植物性の精進だしとか椎茸だしはスーパーにないから、「そういうものをつくったらすごい喜ばれるじゃん」という感じですね。
かつおを食べれない人たちに、「日本の味」として出して、「俺たちはちょっと無理」となったらそれはもったいないので。
町田
かつおは、ベジタリアンの方は食べられないんですか?
竹村
そうなんですよね。魚が入っていると駄目なんです。
町田
Lisaさんから質問で、「争いをなくしたいと強く思った原体験を聞きたいです」。これはストーリー動画で話されていたことですね。
どういう原体験から争いをなくしたいと思ったんですか。
日本的な「いつの間にか」平和にする方法
竹村
そもそも、怒って戦って、「うおーっ」て言って何かを得るみたいなことは、仮想世界でやっていればいいと思ってます。
原体験か…。
仲間外れも嫌だし、ケンカも見てるのも嫌なんですよね。パワハラも嫌いなんですよ。パワハラを僕が受けるということよりも、誰かがパワハラを受けているのも嫌い。
原体験でそういう細かいものは多くあるんですけど、小さい頃に原体験があったのかな…。
パワーでぐいってやられたり、仲間外れにして、「こいつはベジタリアンだからこれ別」とか、そういうことが好きじゃないんですよね。
かといって、それに対して声を上げて、「うおー、それは間違ってる!」みたいな戦いをしていたわけでもないんですが。
そういうことじゃなくて、ふわっと解決したいと思って。日本的なものなのかもしれないけど、「気づいたら戦いがなくなってる」ほうが理想だなと思ってます。じわじわといきたい。
町田
よしたかさんから、「話がとんだ」というコメントがありました。「うまみを摂ると攻撃性が減る」みたいな論文もあるんですね。簡単に、「うまみと争い」の話をしていただけますか。
竹村
そもそも怒ってるときや興奮しているときって、呼吸が短くなるんですよね。それでテンションが上がってくる。
そうじゃなくて、「はあー」という息を抜くという行為が僕はリラックスだと思うんですよ。
だから「息抜き」というんだと思ってます。息を抜かせる行為によって人間はけっこう落ち着くと思っているんですよ。
だから、そういうことで少しでも攻撃性を減らすという思いはありました。
一応科学的な話でいうと、牛やかつお節、椎茸にも入っている「ヒスチジン」というものを摂ると、ラットの排他性が下がるという研究があります。
そういう話を含めると、「うまみで単純に平和になるのかもな」という感覚はありますね。
町田
インドで、うまみが重要ということを食文化から感じた。さらにいろいろな細かい体験から「争いは嫌だ」という考えがあって、その2つを解決するには「おだしだ」という考えにつながったということですね。
竹村
そうですね。あと、原体験を思い出しました。
僕ね、誕生日が8月15日なんですよ。
だから、友達がいないんですよ、帰ってきたときに。誕生日なのに祝ってくれないんですよ。祝ってくれないけど、『火垂るの墓』とかやっているわけ。
もうね、テンションがすごい下がってきて、誰も祝ってはくれないし、すごい自分が罪深い人間なんじゃないかとずっと思っていました。
それが僕の中で感覚的にあったんですよ。
一方インドって8月15日は独立記念日で、ハッピーな日なんですよね。
なんか分かんないけど、「僕のやるべきことはこれなのかもしれない」って、勝手に思ったのかもしれないですね。
町田
誕生日の話も、大事な要素としてあった。
竹村
誕生日については、いまだにちょっと申し訳ないような気持ちになっている。
町田
最後にもう1つ。今月の22日に会社を始めて1周年ですね。
竹村
そうです。やっと1年経つんですよ。
町田
なので、最後に、今後どういうふうにしていきたいであるとか、1年経ってどうだったかというお話をお願いします。
竹村
うちの会社は、僕が死んでも続くようにしたいと思っているんですよ。
株式会社は「僕らそのもの」じゃないから続いたほうがいいし、僕としては戦争をやめてほしいから、争いごとがちょっとでもなくなることを達成するまでは生き残ってほしいなと思っています。
100年続くんだとしたら、そのうちの1年がスタートしたという感じです。
1年の総括としては、仲間も増えたし、海外でもつくっているので、話がやっと進んできました。
国内以外で数字がはねないと結局このビジネスは意味がないので、やっと1歩目を踏み出せたかなというところですかね。
町田
最後に個人的になんで「祭」を会社名につけたのかも知りたいです。
竹村
やっぱり「静と動」だと思っています。ずっと同じことをしてても飽きるんですよ、人間。
たまには文化祭をしたくなるけど、文化祭ばっかりやってると、それはそれで疲れる。
おだしをつくるメーカーさんってけっこう古いので、お祭り性があまりないんですよ。
それでも、たまには祭り性って重要で、感謝を告げるといった行事を設けないと、人間ちょっと脳が止まってくるというか、イケてなくなってくるなと思っていて、そのテンションの調整のために「祭」というワードを入れています。
町田
テンションが続くことで、長く続いていくと。それが、竹村さんがおっしゃってた、ずっと続くような会社にしたいということろにつながっているんですかね。
竹村
お祭り好きなのでね。そうそう。
町田
第2回のときに、さらに詳しいお話を竹村さんにしていただければと思います。それでは、今日も15分間の配信ありがとうございました。
竹村
ありがとうございました。
amiとは?
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