20181213ami_hubble酒井rev

既存の商慣習と争わない。「法務」で「Word」に特化した理由とは

本記事は、Hubble酒井さん(@HubbleDocs)のamiライブ配信の書き起こしです。

株式会社Hubble 取締役CLO 酒井 智也さん

amiファシリテーター松岡(以下、松岡)
Hubbleの酒井さんに来ていただきました。よろしくお願いいたします。

Hubble酒井さん(以下、酒井)
よろしくお願いします。

松岡
Hubbleの酒井さん、今日は2回目の出演です。前回見ていらっしゃらない方もいるかなと思うので、ざっくりと事業の説明をしていただければなと思います。

酒井
Hubbleの酒井と申します。よろしくお願いします。

僕らは、Hubbleというサービスをしておりまして、ドキュメントのバージョン管理システムをつくっております。

Microsoft Wordを使ったことがある人は、すごく共感できる「あるある」があると思います。

たとえば、同じようなファイル名のファイルがすごく乱立して「どれが最新版だっけな?」という状態や、「デスクトップに保存しているフォルダーがごちゃごちゃに」といったものですね。

ほかにもドキュメントをメールで送ったりするときに、「あのメッセージどこにあったっけな?」と時間がかかったりすることもありますよね。

そういった問題を一気通貫で、クラウド上で一元管理して、ドキュメントに関する情報をすべてまとめて保管できるプロダクトをつくっております。

松岡
もしかしたら、Google Docsと似ているのかな?とも思うんですけど、HubbleさんがなぜWordにフォーカスをしているのか伺いたいです。

なぜ「Word」にフォーカスしたのか

酒井
私自身が弁護士なのですが、実際に弁護士や法務の領域はまだまだエディタとしてMicrosoft Wordが用いられているので、そこをまず最適化したいという思いがありました。

「なぜGoogleドキュメントじゃないの?」という質問をよく受けますが、Microsoft Wordが馴染み過ぎていて、インターフェースが変わるだけでも抵抗があるんですね。

松岡
法曹界はそういう傾向が強いですか?

酒井
そうなんですよ。

「オンラインエディタを使ったほうがいいんじゃないか?」とよく言われますが、Microsoft Wordに慣れ親しんでいて、維持したいという考えも現場にはあるんですね。

ほかにも、機能面からして法務にはMicrosoft Wordが適している点があるんです。たとえば契約書や社内規程は、「どこを誰がいつ改定したか」という履歴を残していくことが重要というように。

バージョン管理という意味では、GoogleドキュメントよりもMicrosoft Wordが適しているというところがあるので、「今まで通り、Wordも使えるんだけれども、クラウド上の恩恵を受けられている」というプロダクトにしたくて、Microsoft Wordに特化しようという思いがありました。

松岡
なるほど、面白いですね。えんどうさんから、「ちょっと前まで一太郎でした」というコメントもきています。

法律関係の分野だと新しいものに変わるというのも一大決心になりそうですね。そこを大きく変革するというよりも、いかにそこを改善していくかというところが重要だったんでしょうか?

酒井
そうですね。法務の業界にイノベーションを起こしたいという思いはもちろんあるんですが、イノベーションを起こす前提として、「既存の商慣習といかに調和していくか」という視点もすごく重要だと思っています。

当初、リーガルに特化したGoogleドキュメントのような構想もあったんですけど、まだまだITが入っていっていない領域にいきなり持っていくと、精神的なギャップが生まれて使われないなという考えがありました。

そこでまずは、今まで通り使ってもらっていながらも、クラウド上の恩恵を受けられるように意識しています。「ITってやっぱり便利だな」という思ってもらえれば、少しずつITツールが入っていくのかなと。

松岡
「改善ツールなのかな」と感じる方もいると思いますが、聞けば聞くほど本来の業務にフォーカスができるツールだと思っています。

たとえば、「ドキュメントはどこだっけ?」という悩みも、弁護士としてご経験されたことがあったんでしょうか?

酒井
松岡さんがおっしゃる通りありました。

ドキュメントを作成、編集するという法曹としての本質的な業務はもちろん大変でしたが、弁護士になってギャップに感じたのが、非本質的な業務にけっこうな時間がとられてしまうことでした。

たとえば、似た案件の事案を探しにいったり、似た案件を担当している人を探して、その人に同じようなドキュメントをもらいにいったり。

IT技術でカバーできるのであれば、ツールを使うことで、本当に時間をかけて考えるべき部分に時間を使えるシステムをつくるほうがいいな、という思いがありました。

松岡
このHubbleというツールが、酒井さんが目指す世界観とどう関係していくのかお聞きしたいです。

個人の法務知識・経験を組織のノウハウへ
Hubbleが目指す世界

酒井
まず、弁護士の視点からいうと上場やM&Aをする時には、法務のデューデリジェンス、その会社の法務調査をするんですね。

そのとき、契約書等のドキュメントを調査するのですが、場合によっては、「リーガル的にリスクだ」と評価されてしまう可能性もあると思います。

松岡
私も初めて知りましたが、それは意外と知られていないですよね。

酒井
僕が弁護士として、スタートアップを買収する案件を担当した時の話になるのですが、そのスタートアップが全く契約書を整理していなかったこともあり、すごくいい事業をやっていたにもかかわらず、バリュエーション評価に影響がでてしまったということがありました。

弁護士としての体験から、「法務によって事業の正当な評価を維持したい」と考えています。

また、会社としてどういう世界を目指していきたいかという視点でいうと、「自分たちがやっている業務がほかの人のためになる」、そういう優しい世界をつくりたいという思いがあります。

とくに法務の業界は、それぞれが専門家として個人の知識や経験に基づいてガーっと仕事をしていくことが多いんですが、個々人がナレッジや経験を溜めているのであれば、それを組織のノウハウとしてシェアできるほうが、会社・組織としてもすごく望ましいと思っているんですよね。

松岡
Hubbleさんが提供しているのは、SaaSといわれる売り切りではないサブスクリプション型モデルですよね。

たとえば、WordにしてもおそらくOffice365ではなく、買い切り型で買っていらっしゃるような法務の部署、弁護士事務所もおそらく多いと思うんですけれども、そこはいかがでしたか?

酒井
当初僕らは、弁護士などの専門家と企業の法務部、その2者に使っていってもらいたいと思っていましたが、クラウドで情報を保管することに対して懸念がある弁護士事務所さんも正直ありました。

なので、まずはクラウドで情報を保管することに抵抗がない企業の法務部の方々に使ってもらったうえで、その会社の顧問弁護士等がHubbleを知って、弁護士の方々にも少しずつ使ってもらうような、「徐々に浸透していく」というアプローチがいいのかなと思っています。

松岡
ふーみんさん、コメントありがとうございます。「契約とかは相手がいるから自分たち側だけツールを変えられない的な話も聞きました」ときています。

酒井
ふーみんさんの指摘はその通りだと思っていて、まずは社内や同じ事務所内でのコミュニケーションツールとして今のプロダクトをつくっているんですね。

契約は必ず「相手と交渉する」というプロセスが入るので、そこにも対応できるようなかたちを今、考えています。

契約相手との交渉にも使え、かつ、相手がユーザーでなくても負担のないかたちでHubble上で交渉ができるようなインターフェースや使用方法を検討しているところです。

松岡
面白いですね。おそらく企業価値の向上という本質的なところにかなりアプローチできるようなサービスになり得るということですよね。

酒井
ありがとうございます。

松岡
今年は「SaaS元年」と呼ばれているようにサブスクリプション型のサービスが勃興してきてはいるんですけど、「リーガルテックのSaaS」は、まだ数が少ないと思います。そこに携わる1人としてどういう思いがあるんですか?

酒井
今、松岡さんがおっしゃった通り、「SaaS元年」といわれているぐらい、まだまだ未開拓の領域で1つの正解がない領域だと思うんですね。

さらに、リーガルテックのSaaSは、その中でもこれからの領域であることは間違いないと思います。

「どういうかたちで売り上げを伸ばしていくか」「どうやってプロダクトを使ってもらうか」「どういうかたちでユーザーさんの要望を機能に実装していくか」という辺りは、未開拓な分、プレーヤーとして活躍していくとこの領域のトップランナーになれる可能性があるので、すごい面白いなと思っていますね。

松岡
よしたかさんからこういうコメントがきています「Microsoftから買収を持ち掛けられそう」という。(笑)

酒井
ありがとうございます。実は、USのMicrosoftさんが指定する、Microsoft for startupsというスタートアップ支援の1社に僕らも選んでいただいているので、大変お世話になっております。

松岡
おめでとうございます!

ほかにもコメントがきています。「法務以外の領域で使いたいという声はないんですか」

酒井
実はけっこうあります。たとえば、編集社とかPRを書く会社さんのニーズはあったんですけど、現状、ドキュメントを日々多く扱っている法務の方に特化したプロダクトにしようと思っているので、リーガルに舵を取りました。

松岡
まさに選択と集中というところで、今はもう、法務の領域を攻められているということなんですね。

酒井
クラウドサインとの連携もしていて、Hubbleで編集してクラウドサインで締結する機能を年内にも実装します。

松岡
紙文化ではなくて、きちんと履歴もクラウド上に残るような、そんな未来になりそうですね。

酒井
近い将来、にはそういう未来を実現できるよう、そのプロセスを僕たちが歩んでいきいたいなと思っています。

松岡
Hubbleさんがリーガルテックの領域で革新を起こしていくことを願っています。本日はありがとうございました。

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