
「きっかけはユーザーの想定外の声」想いと仲間をつなぐプラットホームに見る未来
本記事は、tomoshibi 田中さん(@kakesong)のamiライブ配信の書き起こしです。
ライブアーカイブ
あ起業家紹介
株式会社TOMOSHIBI 代表取締役CEO 田中 駆
共感の火をともす仕組み
amiファシリテーター 町田(以下、町田)
本日は、tomoshibiの田中さんに2回目の配信をしていただきます。
まず初めにtomoshibiについて簡単に説明いただいてもよろしいでしょうか?今回は実際に、β版のサービスページを使って説明していただきたいと思います。
tomoshibi 田中さん(以下、田中)
宜しくお願いいたします。
tomoshibiは、ざっくり言うと人版のクラウドファンディングのサービスです。
トップページを見ていただくと、このようにピックアップや新しい、人気といったいろいろな指標を元にプロジェクトと出会えるようになっています。
tomoshibiの中で多い属性は、スタートアップ系で0→1で事業をこれからつくるという人や、NPOといった非営利な目的で仲間集めをしたい人に使っていただくケースです。
せっかくなので、プロジェクトページの中身もtomoshibiのβ版上で一番人気なプロジェクトを使って、説明させていただきます。
今回はその後者のほうで、これから新しくNPO法人をつくるタイミングでtomoshibiを使ってもらいました。
プロジェクトページでは「何をやるのか、なぜやるのか、どうやってやるのか、どんな仲間とやりたいのか、どんな思いを込めているのか」などをプロジェクトオーナーは書くことができます。
その要件に沿って、どういう人に参加してもらいたいかを設定できます。
町田
「話を聞いてみたい」と「応募する」というボタンがあるのですが、ページを読んで「参加してみたい」となった場合は、どのような流れで応募すればいいのでしょうか?
田中
基本的には募集枠を見てもらってから、「ここだったら自分が活躍できるな、協力できるな」という募集の「応募する」ボタンを押してからメッセージを送り、コミュニケーションをとってもらいます。
一方、すごく共感するし一緒にやりたいけれど、プロジェクトの募集枠が限られており、自分の持っているスキルだと今の募集枠にマッチしないので、応募できないケースもあるんですね。
そういうときに、この「話を聞いてみたい」というのを押してもらって、募集枠に対して応募するのではなくて、「興味があるし一緒にやりたいと思っています。ただ、応募できるポジションがないです」という意思表示をしてもらう感じですね。
町田
「ストーク(stoke)というボタンは何?」という質問がきているのですが、どのようなものなのですか?
田中
これはよくある「いいね!」と一緒ですね。
「ストーク」は日本語に訳すと「火を灯す」という意味です。なので、tomoshibi(灯)というメッセージ性に合わせて、みんなでどんどん共感の火を灯し合って大きくしていこうという想いを込めてこのボタンを付けています。
町田
ストークボタンを押すと、それが反映されてトップページに「ストークが多く共感されているプロジェクト」といったように表示されるわけですね。
プロジェクトをつくる側もすぐつくれるのでしょうか?
田中
つくれます!審査があるとよく勘違いされる方が多いですが、今のところ審査はほぼしていません。
つくり方は簡単で、トップページの一番下のほうにいくと「プロジェクトをつくる」というボタンがあり、すぐにプロジェクトをつくることもできます。
一方、無料の面談というかたちで、オンライン、オフライン問わず、僕ら運営と面談をした上で、「こうすればもっといいプロジェクトがつくれますよ」、「こういう募集枠の設定をしたら人が集まりますよ」といったアドバイスをさせてもらったりもしています。
「フリーランスほどスキルはないけど新しいことを始めたい人」
町田
これはβ版とのことでしたが、5月の正式版も基本的に同じかたちなのでしょうか?もしくは、けっこう変わるのでしょうか?
田中
基本的な機能はかなり近いですが、メッセージ性や機能は増えます。
今までβ版では仲間集めのプラットフォームとして提供していましたが、特にプロジェクトをつくるオーナーの目線に立って、「どうやったら仲間集めをしやすいか」という部分にこだわってサービスをつくっていました。
しかし、実際にβ版を利用されたユーザーにヒアリングをする中で、もっとプロジェクトに関わる側にもフォーカスをした方がいいことがわかりました。
ボランティアとしてプロジェクトに関わるだけではなく、きちんと実利を得られる複業としての関われるように、仕事探しや複業探しという働くを探すという部分のエッセンスを正式版では追加します。
それによって複業のマッチングプラットフォームにしていくのが今後の大きな流れです。
町田
そうすると、まっぷーさんから「バスケをしたいといったサークル集めに使えるのかな?」という質問がきていますが、これはどちらかというと正式版ではニーズにあっていないということですか?
田中
もちろん使えなくはないです。ただ、tomoshibiはメッセージ性のある目標をもったプロジェクトに対して、一番効果を発揮するものなので、おそらく違うプラットホームを使ったほうが、サークルなどの場合は集まるんじゃないかなと思います。
たとえば、bosyu(ボシュー)さんとか使ってもらったほうがさらっと集まるんじゃないでしょうか(笑)
町田
他にもよしたかさんから、「TEAMKIT(チームキット)のサービスと似ている気がします」という質問がきていますが、なにか違いはありますか?
田中
TEAMKITさんはフリーランスの方がプロジェクトをシェアするプラットフォームなんですね。
なので、僕らは「フリーランスほどスキルはないけど、何か新しいことを始めたい人」にフォーカスしていきたいと思っています。
町田
方向性は似ているけど、集めたい人の属性が違っているのですね。
田中
ぜひTEAMKITさんにもamiさんに出ていただきたいですね!
正式版でより解像度を高くする
町田
昨日amiで配信していただいたCAFE PASSの二方さんからも「過去にtomoshibiを使って仲間集めをしました」というコメントがきています。
実際にスタートアップの企業で、創業メンバーを集められている方はけっこう多くいらっしゃるんですか?
田中
創業メンバーもそうですし、それこそ二方さんはとても上手に使ってくださって、ライターさんや、コーヒーのお店を紹介してくれる方(サービスの対象者)といった、他のサービスでは集めにくい方を集めていたりしました。
町田
まさに今出てきたカフェの情報を知っている人は、フリーランスの人に募集を出してもなかなか見つからないイメージですが、tomoshibiならそれができるということですね。
先ほどユーザーの方の声を拾っていった結果、β版から正式版のかたちに変えることになったという話がありましたが、具体的にどのような声があって変えることになったのですか?
田中
プロジェクトを立てる人、プロジェクトに参加する人の両方にヒアリングをさせてもらって、立てる人側の声では、よりスキルを持っている人や、よりコミット高く協力してくれる人を集めたいという声が非常に多かったです。
では「そういう人たちに参加してもらうには?」と考えたとき、もう少し実利を伴なうプロジェクトを探せるプラットフォームに育てないと、スキルを持っていたり、コミットできる人が入ってこないことが見えてきました。
一方、プロジェクトに参加する側の声を聞いてみても、「もうちょっと仕事として入れるプロジェクトを探したい」という声が非常に多かったので、複業のマッチングにフォーカスする機能を正式版では取り入れました。
tomoshibiを最初につくったときは、先ほど質問でもあったようにサークルをつくるといった場面でも使ってもらうことを想定していました。
ただ、やっていく中でもう少し本気度の高いプロジェクトを載せて、それに対してより本気度の高いメンバーに合流してもらう場所にした方がいいというのが、β版をやってみての学びですね。
クラウドファンディングとの明確な違い
町田
β版をやっていくなかで、徐々に「こういう機能をいれた方がいいかもしれない」という結論が出てきたと思うのですが、結論が出るに至ったきっかけは何かありますか?
田中
僕らは方針として「リアルを大事にする」ということを掲げています。Webサービスだからと言って、Webだけで完結するのは無理だと思っています。
なので、リアルな場でのイベントや説明会を今までもけっこうな頻度でやってきました。
そこでユーザーさんと僕自身が対話をしていったなかで、上で挙げたような声が多かったことから、それが答えだろうなという確信を持っていきました。
町田
tomoshibiのβ版をつくるときは、どのような流れでつくったのですか?
田中
僕自身が大学のときに経営学や起業の勉強をしていたときに大切にしていた参考書として『模倣の経営学』という本がありました。
イノベーションも必ず何か参考にしているコアな要素があり、その要素に対して自分たちなりにどういうストーリーや独自のエッセンスを掛け合わせてプロダクトをつくるという考え方です。
その考えを大事にしていたので、僕らも最初にクラウドファンディングを参考にしました。
今あるクラウドファンディングをどう変えたら、仲間集めの装置にできるかを考えてβ版をつくったので、かなりクラウドファンディングのサイトは大変参考にしています。
ただ一方で、お金を送って終わりのクラウドファンディングとは異なり、今回集めるのは人なので、どうやっても対面のコミュニケーションが必要になってくるんですよね。
なので、僕ら自身がユーザーさんと顔を会わせる機会や、プロジェクトオーナーさんとユーザーさんがリアルの場で出会う機会は絶対に必要だと思っています。それもありWeb版を出す前からリアルでのイベントをやっていました。
β版をつくっているタイミングでリアルのマッチングイベントを開催し、その中で見つけた気付きを「どうやってWebに落としていくか?」をCTOと一緒に考えてつくっていきました。
町田
リアルな場で本当にニーズがあるかを検証しつつ、それをWeb版に落としていったということですね。
「リアルとWebのバランスが大事なんですね」というコメントがきていますが、やられていてそのように感じた部分はありますか。
田中
Webだけで考えれば、SEOや広告に注力をすれば、一次的に爆発的な伸びを得ることは可能だと思います。それこそ1億円を使ってTwitterでバズった例もありましたよね(笑)
でも、大事なのはそこではなくて、サービスをちゃんと理解してくれる人や使ってくれる人と、まずは対面でコミュニケーションを取り、その人の声を抽出してプロダクトに生かしていかないと、長く使われるサービスにはならないですし、ユーザーにとっても便利なサービスにはならないと思っています。
町田
とはいえユーザーの声を聞くといっても、いろいろな「こうしてほしい」という声があるじゃないですか。
その中からどうやって、「これはやる、やらない」を決めたり、選んだりしているのですか?
田中
そこはシンプルに「どれだけの人がその意見を言っていたか」と「それを言ってくれた人の本気度」みたいなところを見ています。
今はこれだけSNSが発達している時代なので、ありがたいことに「ここをもっとこうしたら?」という意見は山ほどきます。
ただ、さらっとTwitterからtomoshibiのサイトに飛んで、見た人が気付いた意見と、実際に熱量を持って使ってくれた人の意見では、やはり重さが違うと思うので、どれだけの熱量を持った人の意見なのかは、しっかり見るようにしています。
「思ったよりみんな複業したいんだな」
町田
実際に意見をもらってから、開発して実装するまでは、どれぐらいのスパンでされているのですか?
田中
早ければ即日ですね。
だいたいユーザーの意見は、僕のところに来るようにしているので、すぐに意思決定をしてCTOなり開発チームに意見として出し、技術的に問題なければ即実装という感じです。
町田
すぐに意思決定するとのことでしたが、意思決定に悩んだ例はありますか?
田中
悩んだのは、それこそ最初の画面で説明した「話を聞いてみたい」ボタンです。
ユーザーさんから「プロジェクトに興味はあるけど、応募できそうな応募枠がないので、もう少し緩い枠も設定してほしい」といった声がありました。
それをいざつくるかどうか考えたときに、「つくることによって、本来であれば応募枠に応募するはずだったユーザーが、そっちに流れてしまうんじゃないか」「そこから応募した人の熱量を、受け取ったオーナー側は測りにくいんじゃないか」といった、いろいろなケースを考えました。
最終的には、間口を広げて「どんな人でもチャレンジができるように、かつ、オーナー側にもいろいろな人から応援の声が届くようにしたい」と思い、実装しました。
町田
よしたかさんから「リアルの声を聞いて初めて分かったことや、想定と違ったことがあれば聞きたいです」という質問がありますけど、何かありますか?
田中
想定と違ったところで言うと、「思ったよりみんな複業したいんだな」ということは、想定していなかった気付きです。
昨今、複業が隆盛期であるという前提のもとtomoshibiをつくっていますが、それでも想定より本気度が高い複業を求めている人が多かったです。
予想よりも多くの人が、tomoshibiのプロジェクトにパラレルワークの中の1つとして参加し、お金もしっかり稼いでいきたいと思っているということは、ユーザーの方の声を聞いて初めて気づきました。
町田
あっという間に20分が経ってしまったのですが、5月に正式版をリリースされるということで、リリースされてからまたお話も伺えればと思います。
田中
はい、ぜひお願いします!
町田
2回目の配信でしたが、いかがでしたか?
田中
短いです。(笑)
町田
(笑)どういうことをもっと話したかったなどあります?
田中
そうですね。せっかくこうしてユーザーの方の声がリアルタイムで聞けるので、もうちょっとコアな部分をじっくり話したり、実際にユーザーの方に使ってもらって「ここどうですか?」という声を聞いたりしたいと思いました。
町田
ぜひ次回の配信ではその部分も取り入れて配信していければと思います。
田中
お願いします。
町田
それでは、本日はありがとうございました。
田中
ありがとうございました。
文・写真:ami編集部