20190207_空松村さん

「泊まった人が笑顔になる」住み込みで働いて分かったPriceTechが持つ可能性

本記事は、空 松村さん(@dmattsun)のamiライブ配信の書き起こしです。

株式会社空 CEO 松村 大貴さん

amiファシリテーター 町田(以下、町田)
皆さん、こんにちは。
今日は、空の松村さんに2回目のライブ配信をしていただきます。よろしくお願いいたします。

空 松村さん(以下、松村)
こんにちは。宜しくお願いします!

空のまっつんと言います。株式会社空(そら)は、MagicPriceというホテル向けのサービスを提供しているスタートアップです。

具体的には、ホテル業界の料金設定を最適化する支援をしています。

皆さんが旅行予約サイトで予約するときに、日にちやホテルさんのプランによって違う料金が出ていると思いますが、その価格は多くの場合ホテルの旅館の方が自分で設定をしています。

僕たちは、その料金を設定する部分をサポートするサービスを開発してご提供しています。

町田
以前の配信で、ホテルの人たちにとっては料金設定が負担になっていることを知り、MagicPriceを立ち上げられたというお話を伺いました。

プライシングが持つ伸びしろ

町田
ホテル業界の中にも多くの要素がある中で、なぜ価格という領域に取り組まれたのですか?

松村
少し話したように、僕自身が会社をつくってから事業をいろいろとピボットしています。

事業を詰めきる前に会社を作ったので、何とか事業をつくって立ち上げないと生活がままならないという状況でした。

なので、自分の持てるものを総動員して「何がつくれるかな」とか、「自分がこれまで学んできたことや経験したこと、出会った人たちのことを思い出して何ができるかな」と起業1年目はずっと考えていました。

そんなアイデアが事業とつながったのが、前職のヤフーでやっていた、広告配信や広告のクリックしたときに広告料金がいくらかかるかというのを自動で最適化する技術などのアドテクと呼ばれる分野でした。

ユーザーと広告主にとって一番コストパフォーマンスがよい効果が出るように、このユーザーにはどの広告を出したらいいか、それをクリックするといくらかかるような設定にしたらよいかという部分を、人ではなく自動で計算しています。

それがヒントになり、広告で使われている機械学習やアルゴリズムを、別の業界でも使えるんじゃないかなと思ったのがMagicPriceの最初の着想ですね。

それからプライシングについて調べてみたところ、金融・広告以外の業界では、まだまだアナログで行われていることが見えてきて、僕たちも何か提供できる可能性や伸びしろがあることに気付いていきました。

町田
金融・広告業界にはプライシングの技術が導入されているにも関わらず、ほかの業界に導入されていないのは何故ですか?

松村
導入するための技術的な問題や、技術者の数の影響もありますし、何より金融業界がその技術を使うことで一番儲かるんですよね。

どのような価格変動をするか予測をして当てる技術をFXや株式に適応すると、分かりやすく利益として帰ってくることもあり、もともと業界として注目されていましたし、データサイエンティストやエンジニアの皆さんの関心も強かったです。

そしてその次に、広告でも使えるんじゃないかということで適用されてきました。

つまり、プライシングの技術をつくれる人が限られていたため、大きなインパクトを生みやすい領域につくれる人たちの関心があつまった結果、金融と広告業界にまず広がったということです。

僕たちはその技術をプライシングをするテクノロジーとして、PriceTech(プライステック)と呼んでいます。

このPriceTechのニーズはもちろん全業界にありますが、価格が頻繁に変わったり、大きく変動するような業界から浸透していくと考えています。

そしてこれからは、毎日価格は変わるが、そんなに激しくはない業界に浸透していくと思います。

「スタートアップとして参入しても、大きな提供価値を生み得る領域」

町田
これから今までPriceTechが導入されていなかった領域に導入が進むというお話でしたが、他にもスポーツの試合のチケットや音楽などいろいろな業界がある中で、なぜホテル業界に着目したのですか?

松村
僕の会社の空という名前は、航空業界の仕事をしたかったことが由来です。

航空系や宇宙系のビジネスを始めたくて、この会社を創業したので、空という名前をつけています。

一番最初は、航空券の料金設定を機械学習で最適化する、航空券向けMagicPriceを着想しました。

リーンスタートアップの教科書通りに、ヒアリングをたくさんするために、航空業界の人に何十人もお会いし、それに関係する旅行業界の人にも話を聞きに行ってみました。

まだパワポしかない状態でしたが、航空や旅行業界の人に話を聞いていた結果、その関連業界としていらっしゃった、ホテルの人にも聞いてみたことがホテル業界に関わった最初のきっかけです。

そうやってユーザーヒアリングを繰り返す中で、はっきりと分かったニーズが、「ホテル業界では客室の料金設定に困っていて、そこにはソリューションがまだない」ことです。

航空業界では、テクニカルな料金設定の方法が既に発明されていましたが、ホテル業界では何もない状態でした。

ホテル業界の方と話をする中で、「スタートアップとして参入しても、大きな提供価値を生み得る領域だな」と考え、だんだん絞っていったというかたちですね。

町田
ホテル業界の人から「こういうことで困っているんですよ」と聞いた部分と、実際に困っている部分が違うということもあるんじゃないかと思うのですが、プライシングがペインになっていると確信を得たきっかけはありますか?

松村
方法論で言えば、「課題、何か教えてください」と言っても本質的な課題は出てこないので、「課題の仮説はこうだと思うんですけど、合ってます?」や、「ホテル業界の方はこういうことで困っていると仮説を持っていますが、この順番で合っていますか?」という聞き方をしています。

もしくは「これとこれだったらどっちのほうが重い問題ですか?」などという聞き方をして具体化していくということもやりましたね。

最初のニーズを確かめる段階ではそのレベルの検証でいいですが、実際にそれをサービスに落とし込んでいく段階ではその理解では足りません。

なのでインターンのような形で、実際に旅館さんで住み込みで働かせていただき、自分たちが作るサービスを将来使い得るような人がどういう仕事されているのかを体験しました。その中で、働いている人がこんなに忙しいんだなというのを知りました。

普段、どんなお仕事をしているのか、そこにどんな課題を感じているのか、どういった解決策なら使えるのか理解を深めていくには実際に現場に入り込むしかないなと。

ずっと飲食店で働いていて飲食店の課題を解決したいといった、その業界にいて起業した人は現場に入らなくても大丈夫だと思いますが、僕はそうではなかったので、入り込む必要があるなと考えていましたね。

町田
プロダクトもつくり、事業も考え、さらに入り込んで働くとなると、かなりの手間がかかりそうですが、そこに抵抗はなかったのですか?

松村
そうですね。プロダクトをつくると言っても、本質的な課題を理解せずにプロダクトつくって外す方が時間の無駄なので、無駄なものをつくらないためにも、まず深く課題や業界に対して共感や理解をする時間が必要かなと僕は思っています。

今後新しいサービスを作るときも、まずは聞いたり想像して、実際に入り込んで検証するところからスタートすると思います。

町田
ホテル業界で働く前後で課題の認識が違っていたり、より深く気付きがあった部分はありましたか?

松村
最初は、それこそインターネット広告の世界で行われていた技術をそのまま適応できると思っていました。

ただ、働いてみてわかったことですが、ホテルで働く方は接客や、夜勤の仕事の締めだったりいろんな仕事を兼務していて、すごい忙しいんですね。

そうすると、料金設定の仕事を集中してやれるマーケターとは違い、少しの時間しかかけられないし、マーケティングを専門的にやっていない人が使えるサービスにしなければいけないことは、働いたおかげで気付けましたね。

それがなかったら、「高機能で、複雑な分析ができます!」と謳ったテクノロジーに寄ったプロダクトになっていたかもしれません。

つくり手として「すごいだろう、このテクノロジー」というプロダクトができても、使われなければ無価値ですし、対象としているユーザーが使いこなせるプロダクトはどういうものかを考えるいい経験でした。

消費者側の旅行体験が高まっていく

町田
MagicPriceの特徴でもある、後ろで難しいことをやっていても、それを感じさせないシンプルなUI・UXはその経験から作られたのですか。

松村
もちろん、ホテル業界にも色々な人がいらしゃいますが、「インターネットが大好きでパソコンが得意で分析も何でもできちゃいます」という人よりは、「スマホは簡単に操作できます」という方が多いわけです。

なので、難しいグラフや詳細な数字をただ並べるのではなく、なるべくシンプルな見た目にすることで、与えられるデータに「怖くないよ」という印象を持たせるように工夫しています。

そうやって、真のユーザーの声に耳を傾けてプロダクトを作っていくことで、だんだん研ぎ澄まされ、シンプルになっていくんじゃないかと思います。

町田
MagicPriceを使って実現したい世界について教えて頂きたいです。

松村
ホテル系の多くの方がMagicPriceを使っていただくようになると、旅行したときの感動や、ホテルに泊まっているときの気持ちよさといった、消費者側の旅行体験が高まっていくと思っています。

なぜかと言うと、各ホテルさんが、マーケティング、販売、客室の料金設定のレベルが各ホテルとも上がり、その点での差が小さくなります。

その中で、どう収益を上げていこうか考えると、ホテルの質を上げることになるんですね。

「ホテルのサービスの質を高めていこう」とか、「多くの人に喜んでもらえるようなリニューアルとかプランの改善をしていこう」というように、ホテルの戦略を考えていらっしゃる方の考え方が顧客体験を考える方にスイッチしていくんですね。

その日のホテルさんの評価やニーズに合った料金がホテルごとに設定され、ホテルさんはサービスやおもてなし、宿泊体験の向上に努めていくというふうにだんだんなってきます。

長期で見ると、観光業界的にもプラスのインパクトを与える支援ができるんじゃないかなとは思っています。

町田
お客さにおもてなしをしたり、ホスピタリティーを上げるといった、より本質的なところにフォーカスできるようになると。

その結果、ホテルを利用する側も宿泊体験の満足度が上がる世界観を実現したいということですか?

松村
そうですね。

僕たちが支援する料金設定はホテルの収益にとても関わるポイントですが、本質的な部分に注力できるようになることはホテルの皆さんも望んでいるのではないかと思います。

本来的にやりたいのは、「泊まってくれた皆さんに笑顔になってほしい」というのがどのホテルで働かれている方も共通しておっしゃっています。

そこにもよりコミットできることは、宿泊されるお客さまも望んでいるこなので、早く機械化、自動化できる部分は僕たちがカバーしていきたいなと思っています。

町田
せっかくなので、質問も見ていければと思います。

「サイトコントローラー(予約サイトなどと連携して各販売ルートの客室在庫を同期し、一元管理できるシステム)と空さんとの関係はどのような関係なんでしょうか?」という質問があります。

松村
簡単に答えると、パートナー関係にあって、僕たちのサービスと連携をしていただいて、一緒にホテルさんに提供している関係です。

町田
次に、「すでに料金設定している老舗ホテルや旅館への導入は意外にハードルが高いんじゃないか?」という質問がきています。

松村
すでに日本の全ホテルが毎日料金設定していて、それをもっと楽に、より精緻にやっていきましょうというご提案をしているので、ハードルは高くないと考えています。

今まで価格を考えていなかったり、苦手だから1年間あんまり変えずにやっていますという方にはマインドシフトが必要ですが、今までも料金調整をされているホテル・旅館さんには、分かりやすくメリットを感じてもらっています。

町田
次の質問が、「初期のUIは実際に松村さんがデザインを担当されていたんですよね?」というものです。

松村
そうですね。

デザイナーを専門でやっているメンバーが入ったのが最近なので、それまでの最初の1~2年ぐらいはずっと僕がデザインをやっていました。

会社のWebサイトやランディングページ、UIの部分も僕がラフで書いたりしている、デザイン系起業家なんじゃないかと思っています。(笑)

MagicPriceが作るミライのかたち

町田
最後に1問だけ質問させていただきたいのですが、おそらくこれからホテル以外の領域のプライシングに対象を広げていくことも考えられていると思いますが、その将来のプランを伺いたいです。

松村
社内ではいつも語っているのですが、モノやサービスの売り買いがされているところには必ず価格が付いているので、世の中の全部の価格に私たちのサービスは適用できると思っています。

なので、MagicPriceは価格がつく全事業領域が適応対象になると考えていますし、それを通して、世の中の価格がもっと流動的になる未来がくると思っています。

技術的な進歩で決裁もキャッシュレスになってきているのもあって、端数の決裁がしやすくなり、価格も1円単位や1円未満の端数のコントロールもしやすくなっています。

さらに、CtoCだったり、人と違ったユニークな体験やモノが欲しいという人が増えているので、大量に商品を生産して全部同じ値段で売るという時代から、「私にとってこの体験はこれぐらいの価値がある」とか、「私にとってこの人がつくってくれたこのクラフトはこういう価値を感じている」という価格の決め方も変わる時代が来るんじゃないでしょうか。

その結果、モノとかサービスの値段がもっとパーソナライズされ、時間や状況によって変動する未来が来ると思っています。

そうなると、日常のものを売り買いする全てタイミングで「これ何円で売ろうかな」という悩みが発生するので、人が値段を付けることがすごい難しくなるはずなんですよね。

そうなった未来に、僕たちのMagicPriceは裏側で常にどういう料金で売ると一番いいのかを分析してスマートに提案をし続けるサービスになっていたいです。

そこに向けての、今、1歩1歩を進めている状況です。

町田
パーソナライズされた価格が、表面的な部分だけではなく本質的な価値にフォーカスして決められる未来はとてもワクワクします。

それでは本日もありがとうございました。

松村
ありがとうございました。

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