20181122_ムスカ串間さん

20年諦めなかったから今がある。研究開発スタートアップにこそ必要な「発信力」

本記事は、MUSCA串間さんのamiライブ配信の書き起こしです。

株式会社ムスカ 代表取締役会長 串間 充崇さん

amiファシリテーター森(以下、森)
今日は、MUSCAの串間さんにお越しいただきました。ありがとうございます。

MUSCA串間さん(以下、串間)
はい、こちらこそ!


本日、初めてご覧いただいている方もいらっしゃるので、まずMUSCAさんがどういうことをやられているのか簡単にご説明いただけますか?

串間
われわれMUSCAは、「インセクトテクノロジー」を使ったリサイクルシステムを持っています。何をしているかというと、やっていることは非常にシンプルです。

たとえば、家畜の糞尿や食品ロスなど、いろんな有機廃棄物が世の中にはたくさんあふれていて、それが環境負荷をかけていたり、社会問題化しています。

また、ハエの幼虫は完全に廃棄物を残さず食べ、その分解されたものが有機肥料になります。これが、オーガニック農業に非常に適したものになるわけです。

「タンパク質飼料」と「有機肥料」の2つの生産物を1週間という非常に短い時間でリサイクルしてしまうシステムをわれわれは事業化しております。


このようにMUSCAさんはタンパク質危機に立ち向かうという、すごく大きい問題に立ち向かっています。

前回、暫定CEOの流郷さんにお越しいただきまして、「MUSCAはイエバエをサラブレッド化するノウハウを持っているんです」というお話を中心に伺いましたが、今日は、串間さんご自身のことを聞きたいなと思っております。

一番最初に公開配信のときに出ていただいたときに、「20年間ずっと研究していて、家の電気よりも研究所の電気を優先した」「九州を1周していました」みたいな面白エピソードが飛び出してきて、どういう方なんだろうと思いました。

MUSCAさんのこの技術はロシアから引き継いだ技術だというお話を伺っているんですけれども、引き継ぐに至るまで串間さんはどういうことをやっていたのか、教えてもらえますか?

ロシアでのハエとの出会い

串間
もともと、高専の電気科を卒業しました。


電気をやっていたんですか!?虫じゃないんですね。(笑)

串間
虫じゃないです。どちらかというと発電所や変電所、電柱などを専門に、電力会社に就職して組織の一員として頑張っていました。


電力会社にお勤めだったんですか?

串間
そうです。電力会社でしばらくやっておりました。

素晴らしい企業ではあったんですが、自分自身としてはもう少し自分が何か直接的に関与して、人と違うことがやりたいという考えがありまして。

ロシアの宇宙開発技術を販売するという、面白い仕事をテレビで見まして、それからすぐ電力会社を辞めて、その仕事に携わるようになったというのが約20年前です。


「これやりたい」と言って、仕事にすぐ就けたんですか?

串間
いやもう、何の保証もなく会社を辞めて面接に行きました。そこで要らないと言われたら、今、僕は違う仕事をしていると思うんですけど。(笑)


そこで就いたのはどういうお仕事なんですか?

串間
僕はロシアのいろんな技術を開発するような仕事をしたかったんですが、最初は農業の仕事でした。

会社が機能性野菜の独自ブランドを立ち上げようとしていた時期なんですね。「ベジフルーツ」といって、ロシアのいろんな機能性を持った種の権利を持ってきて、「日本で育てて日本でブランド化していこう」というプロジェクトがあったんです。その栽培マニュアルをつくれというミッションでした。

それぞれ品種ごとに、日本の品種と全く違う特性があるので、農家さんに渡すためのマニュアルをつくる仕事が最初の仕事でした。


全く電力と関係ないですね。

串間
僕は、農業の分野というのは全くのド素人だったんです。

それを数年やって、ある程度販路もつくり上げて、その事業を事業化権というかたちで売却したあとは、やっとロシアの仕事をさせてもらえました。


そこからは研究者として働いたんですか?

串間
両面ですね。研究開発もやりながら、ロシアの開発を平行してやっていました。


じゃあ、ハエに会うのももうちょっと先ですか?

串間
もう最初から、野菜の仕事をしながら、ハエを横目で見ていました。


はじめから見ていた!(笑)

串間
会社としてそれぞれ何をしているのか、会議は一緒にやるのでわかるわけですね。「このハエはすごい」とずっと思っていました。


その会社に行ったときから、ハエが解決しようとしていたようなタンパク質危機みたいなのもご存知だった?

串間
その当時は、食料危機だとかタンパク質危機を解決しようという考えはなかったんですけど、ハエたちの持っているポテンシャルは感じていました。

有機廃棄物をリサイクルできるということはすごいなと。人類としてこのハエはいずれ役に立つだろうと感じましたね。

個人的には、4~5年前に今のような状況になっていたら一番理想的だったんですけど、ようやく今、流れがきているなと思っています。


ハエのすごさに感動するだけでは、電気が止まっても研究をし続けるような期間は耐えられなかったと思うんですけど、いつから自分事化していったんでしょうか?

研究開発をあきらめないワケ

串間
僕があきらめたら、20年間積み上げてきたハエの血統が途絶えてしまうんですよ。また0に戻ってしまうことだけは避けたいと思いました。

「何が何でも、サラブレッド化されたイエバエの種は次の世代に残さないといけない」という義務感が非常にありました。僕1人が苦労して、僕1人が勝手に死んでいっても、ハエさえ残れば本望だと。

僕も子どもがいるんですが、子どもたちの世代に必ず役に立つと思っていたので、やめるという選択肢はなかったんです。


サラブレッド化されたハエを守り抜いた。

串間
そうですね、ありがとう。(笑)


20年間でこのハエは何世代進化したんですか?

串間
約500世代から600世代ですね。


500!?超サラブレッドですね。

今のお話は基礎研究をされている研究者さんたちの希望になるなと思います。

とはいえ、使命感がある中でも成果が出ないとすごくしんどいじゃないですか。そこはどう乗り切っていけばいいんですか?

串間
「何が何でもやり抜くんだ」という強い思いがないと、研究開発はどこかでとん挫したり、目的自体が変わってしまいます。

そして、「今研究している技術が何の役に立つのか」「その技術をどうしたいのか」という将来イメージをしっかり持つこと。

常に目的意識を持ちながら研究開発をやっていけば、必ず理解者も増えますし、応援してくれる人との縁も生まれます。諦めないこと、強く信じることは大事だと思います。


最初は興味で始まったものでも、「それが何につながるか」をしっかりと認識して言語化する。

串間
大事なプロセスだと思います。


そうはいっても、あきらめちゃう人が多いですよね。

串間
だから、「実現できれば本当にこうなるんだ」という夢物語をしっかり言語化することが大事だと思います。

そこに共感してくれる仲間が必ず現れるので、それを発信し続けることも大事ですね。


日本のスタートアップ業界の課題の1つとして、「研究開発型のスタートアップをいかに生み出すか」というものがあると思います。

MUSCAさんは今まさに花を開きつつあるという現状だと思うんですけれども、研究者の人たちへのアドバイスなどはございますか?

串間
まだわれわれも資金調達フェーズなので、そんな大したことは言えないんですけども、人との縁が広がっていけば、そこから生み出されるエネルギーも大きくなっていきます。

資金や人手、アイデア、いろんなものが結びついていくことによって、1歩1歩ステップアップしていくということですね。

「スタートアップとしてこれを実現したいんだ」と思う人はとにかく、いろんなところに出ていって、発信することが必要だと思います。


それは大切になりますよね。

ひとつもったいないなと思うのが、「研究者だから発信はやらない」というような、一種の壁があるのかなと感じています。

串間
研究者だからこそやってほしいですね。

研究者が思う「何をどうしたいのか」をどんどん発信すれば、そこにファイナンスの専門家など、いろんな方がどんどん知恵やノウハウをくれるタイミングが来ます。


串間さんから見て「こういう支援があったらうれしいな」「この時期にこういう支援があったらうれしかった」ということはありますか?

串間
まだ起業する前の人たちに何らかの支援やサポートがあると、もっといろんなスタートアップが出てくるんだろうなとは思っています。


それは、研究サイドに対して、それとも、ビジネスサイドの話でしょうか。

串間
それこそ、研究者というのは会社のつくり方1つ知らないので、まずはシードの前の段階。「シードに行くためにはこういう方法がありますよ」というようにサポートしていくと、もっともっとスタートアップというのは出てくるのかなとは思います。


スタートアップ自体が成功する確率は低いと思いますが、研究開発型スタートアップがスケールしていくのはさらに難しい。

でも、誰かがやらないといけない部分ですね。

串間
そうですね。「やらない」というのは、選択肢にありません。

将来の役に立つために研究開発しているはずですが、技術者や開発者が強い思いを持たないと、たぶん、資金も集まらないかなと思います。


その研究にどれだけ熱量を持てるかということがキーポイントになりますか?

串間
そうですね。あとはそれを言語化して広げることですね。


串間さんはずっと長く、すごい志をもって事業を続けてきて、ひと言ひと言の重みが皆さんに伝わっていると思います。

串間
伝わればありがたいです。


貴重なお話ありがとうございました。

最後に、今、一番困っていることは何かありますか?

串間
資金調達フェーズなので、足の長い潤沢な資金を必要としていることですね。

とくに、われわれは設備投資型の事業なので、どうしてもまとまった資金が最初に必要になってきます。

それさえクリアすれば、次の資金も集まってくるだろうし、売り上げも立っていく目途もついていますので、ぜひそういうご縁がいただければと思っています。


資金の出し手の方、ぜひよろしくお願いします。

串間
はい。よろしくお願いします。


MUSCAさんが大いに花開く姿は、本当に研究者の方々の大きな希望になると思うので、心から応援しています!

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嬉しいグォー!これからも応援よろしくグォ!
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