突き動かすのは音楽への「偏愛」。音楽を民主化したプレイリストが創る世界

音楽ストリーミングサービスの代表格「Spotify」をはじめ、Apple、Amazon、ディズニーなどの大企業も続々と同領域に参入をしている。定額制ストリーミングサービスの普及により、音楽の聴き方は大きく変わった。その最たる例がプレイリストの台頭だ。

プレイリストは、ジャンルやアーティストに関係なく、「複数の曲をシーンや感情に紐づいた文脈をつけてまとめた」ものだ。それによって音楽の聴き方も、曲やアーティストから選ぶ「コンテンツ消費」から、シーンや気分から選ぶ「コンテキスト消費」へと移った。

一方で日本では、ストリーミングサービスは10%程度しか普及しておらず、プレイリストも市場としてはまだまだ未成熟だ。そのプレイリストの領域に日本から挑む1人の起業家がいる。

プレイリスト黎明期の日本が抱える課題はなんなのか。彼はなぜ挑み、どんな勝ち筋を見据えているのか。日本の音楽を変えうるサービスの可能性に迫った。

※本記事は、CotoLab. 西村さんのamiライブ配信の書き起こしです。

プレイリストがもつ影響力の正体

ーどのようなサービスをやられているのですか?

DIGLE 西村さん
弊社は、音楽プレイリスト領域の事業をやっておりまして、音楽プレイリストを用いたメディアとサービスを運営しています。

DIGLE MAGAZINE」では、毎日人気の音楽プレイリストを紹介したり、アーティストさんのインタビューをプレイリストと共に記事で紹介しています。

もう1つの「DIGLE」は、Spotifyで自分がつくったプレイリストを公開し、他の人にシェアできるサービスです。プレイリストを公開することで、いいねがもらえたり、フォローしてもらい、プレイリストを起点にしたにファンをつくれるサービスです。

ーどこでマネタイズしているのですか?

メディア事業では、広告ビジネスがマネタイズ方法の1つです。また、プレイリストに曲を入れるためのマーケティング領域もキャッシュポイントになり得ます。

人気プレイリストだと、1つのリストに数万人のフォロワーがいるので、無名なアーティストでもそのプレイリストに入れば、多くの人に聴いてもらえます。なので、「うまくプレイリストに入るように工夫をして、自分の曲を流行せる」新しいヒットさせる形が広まってきています。このプレイリスト使ったマーケティングをプレイリストマーケティングと言います。

このプレイリストマーケティングのサポートに入ることでマネタイズできると考えています。

日本ではプレイリストマーケティングは、まだまだ未成熟ですが、グローバルではSpotify、Apple Musicといったサービスが音楽を聴くツールとして定着してきており、音楽の新しいマーケティング施策として重要性は高まっています。

「コンテンツ消費」と「コンテキスト消費」の違い

ープレイリストの特徴はなんですか。

プレイリストの特徴の1つは、「コンテキスト消費」できることだと思います。今まで音楽は、特定のアーティストや曲が好きだから聴くといったコンテンツ消費が中心でした。しかしプレイリストでは、シーンや気持ちに合うから聴くといったコンテキスト消費が中心になるので、「新しい音楽やアーティストを知り好きになる」循環が起きやすいです。

その最たる例として、新しい音楽を見つけたいときに、曲やアーティストを聴かずにプレイリストを聴く方は、みなさんの中にも少なくないと思います。

もう1つプレイリストを語るうえで重要な特徴は、「レコメンド機能」です。これは、今までユーザーが聴いた曲データをもとに、その人に刺さるものを自動的に選び、プレイリストを作成する機能です。

しかし弊社はあえて、レコメンド機能で自動的に作られるプレイリストではなく、人がつくる「属人的な」プレイリストに注力しています。

私たちは、プレイリスター(プレイリストをつくる音楽キュレーター)が、その人の背景を含めて曲を選びつくったプレイリストから、ユーザーがストーリーを感じることに価値があると思っています。プレイリストを通して、他人の経験を共有できることにこそ価値があるのです。

属人的なものに着目するもう1つの理由は、「人は自分にとって心地よい曲ばかり聴きたくない」と考えているからです。

リコメンド機能によって選曲のパーソナライズ化が進むと、その人にとって心地のよいコンテンツはたくさん聴けるようになります。しかし、全てが心地よい曲だと、1つ1つの曲に対する印象が薄くなってしまい、何の曲が流れたか覚えていない状態になりかねません。しかし、ただ違和感のある曲を混ぜるだけでは、ただ不快感を感じるものになりかねません。

では、その課題を解決するものはなにか?

それが人の意思が介在したストーリーです。プレイリストにプレイリスターがつくったコンテキストを持たせることで、曲以外の聴く理由をつくり、違和感がある曲も聴きやすくできるのです。

その意味でも、人がつくったプレイリストの存在意義は大きいと思います。

「プレイリスターはインフルエンサーになり得る」

ーストーリーをプレイリストに持たせる発想はおもしろいですね。

もっと言うと、プレイリストには個人の趣向や思考が現れるので、プレイリスターはインフルエンサーにもなり得ると思います。

Instagramでは、インスタグラマー(Instagram上でのインフルエンサーのこと)を見て、その人が好きという理由だけで、その人が使っている化粧品を使ったり、着ている服を着ることが一般的になっています。

それと同じで、プレイリスターが好きだから、その人が聴いている音楽を聴いたり、その人が作ったプレイリストを聴くという流れが出てくると思います。

ーNetflix(映像のストリーミングサービス)では、コンテンツのシェアや評価システムが廃止されましたが、その流れとDIGLEは逆行していますよね。

作品自体を評価する流れは弱くなってきていると私も思います。Spotifyでも、プレイリストをフォローする機能はありますが、作品に対して評価する機能はありません。

なので、私たちも作品を評価するのではなく、フォローによってユーザーの好みを把握したり、聴く人にとって適切な作品を正確に届ける部分に注力していきたいです。

これからは「自分で」コンテキストをつくる時代だ

ープレイリストが広まったことでアルバムで曲を聴くことも減りました。その結果、アーティストがアルバムでコンテキストを表現できなくなりませんか?

私自身も、アルバムで楽曲を聴くことはほとんどなくなりました。

昔はSpotify、Apple Music、YouTubeといった、無数のコンテンツにアクセスできる手段がなく、コンテンツの種類が限られていたので、アルバムはコンテキスト消費をする手段の1つとして重要でした。

しかし、無数のコンテンツにアクセスできるようになり、簡単にプレイリストを通してコンテキストをつくり、消費できるようになったことで、アルバムの必要性は薄れてきています。

アーティストからしても、ユーザーがアルバムを聴かなくなったので、1回のアルバムで曲を出し切るよりも、1曲ずつ分散させて出した方が再生数がとれます。ユーザーの聴き方が変わってきたことで、アルバムの概念も徐々に変わってきています。

Spotifyが変える曲の作りかた

ーSpotifyやApple Musicによって、曲づくりの方法にも変化はありますか?

3つの変化が起きています。

1つ目は、曲の構成です。Spotifyは、30秒以上再生されると1回再生されたとカウントされるので、最初の30秒をいかに聴かせるかが重要です。

そういった背景もあり、今Spotifyにあがっている曲は、イントロが短かったり、最初からサビが始まるといった、Spotifyに合わせた楽曲制作がされています。

2つ目の変化は、Spotifyジャンルのようなものができたことです。今までJ-POPやロックといったジャンルカテゴリーがあり、ユーザーもそれを元に曲を聴いていました。

しかし、Spotifyではコンテンツ消費だけでなくプレイリストを用いたコンテキスト消費が浸透しています。ですので、コンテキスト消費の概念で考えれば、1つのジャンルにとらわれた楽曲より、いろいろなジャンルの要素を取り入れた楽曲の方が需要があります。

例えば、「ベースはポップスだけど、R&B要素やヒップホップ要素もある」といったジャンルを、複合的に混ぜた楽曲をつくっているアーティストもいます。そのような複数の要素が混ざったジャンルを「Spotifyジャンル」と言っています。「Spotifyジャンル」はプレイリストにピックアップされやすいので、マーケティング的にも有利なわけです。

聴き手の好みに適したジャンルの曲を複合的に混ぜてプレイリストをつくり、多くの曲を人目につきやすくする。まさにマーケティングです。

3つ目はフューチャリングやリミックスが増えたことです。リミックスすることで、リミックスしてくれた人のページにも曲が載るので、面を獲りやすくなりますし、曲のジャンルも変えやすくなります。

たとえば、ロック調の曲をリミックスしてダンス調にすることで、いろいろなプレイリストにピックアップされやすくなり、結果的に面を獲れる確率が増えます。それと同じ理由でフューチャリングも増えています。

ー音楽ストリーミングサービスの浸透度合いは、「アメリカやヨーロッパ」と「日本を含めたアジア」で異なっていますが、それによって違いが出ている部分はありますか?

日本では、ファンビジネスが音楽業界を盛り上げているので、フィジカルと呼ばれるCDや物の販売がまだまだ強いです。一方で、アメリカやヨーロッパでは、ビルボードやチャートに載っている曲のほとんどは、CDを出さず配信のみで勝負しています。

そういったマーケット構造的な違いがあります。

ただアジア全体で見ると面白くて、アジア諸国の多くではもともとCDが富裕層しか買えなかったので、音楽を聴くこと自体がニッチな体験でした。

しかし、格安のスマートフォンが普及したことで、CDを聴く段階を飛ばして、いきなりストリーミングサービスを使って無数の音楽にアクセスできる環境になりました。アジアの音楽市場は急成長しているので、私たちも注目しています。

プレイリストで日本のアーティストを世界に

ーDIGLEさんが目指したい世界についてお話いただきたいです。

グローバルと日本の音楽市場を比べたときに、日本は3年~5年ほど遅れています。ただ、音楽の市場の規模だけで見ると、日本はアメリカに次ぐ世界で2番目の市場です。

しかしこれからは、日本のアーティストが今までの方法で活躍するのは難しいと思います。CDのような高単価な商品とは違い、音楽のストリーミングサービスは、1再生1円未満という世界です。そのため、アーティストとして生活するにはどれだけ再生されたかが重要です。

そんな中で、DIGLE MAGAZINEやDIGLEを通じて、プレイリストとアーティストが絡めまることで、日本のアーティストがグローバルでも聴かれる環境をつくりたいです。

日本の音楽業界にも、新時代の幕開けは確実に近づいてきています。

文・写真:ami編集部

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ami

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