「衝動買い」がアートを変える。シームレスな世界をつくる異色のギャラリーの野望

アートメディア「The Art Newspaper」が発表する、世界のアート展覧会でベスト5に日本の展覧会が3つランクインするなど、日本はアート好きの国だ。

しかしアート領域のマーケットサイズで見ると、米国は2.84兆円、中国は1.42兆円に対して日本は2437億円と大きな差が出ている。なぜこれだけの差が生じているのか?

一般の人がアート作品を買わない理由の1位は、「特に理由がない」という結果もアンケートで出ていたりする。逆に言えば「買う理由さえ作ることができれば十分成長の余地がある」とTAMENTAI GALLERY 山本さんは話す。

では、その仕組みはなんなのか?なにを変えようとしているのか?その秘密は意外にもシンプルだった。

オンラインとオフラインが繋がる意味

ーどういうきっかけでおふたりは会われたのですか?

TAMENTAI GALLERY 山本さん(以下、山本) 僕が前の会社にいたとき、co-ba hiroshimaがオープンするタイミングでやっていた説明会に参加したのが最初の出会いです。

その時「起業とかしようと思っているんですよね」と言ったら、「いいじゃないですか!」というビジネストークをまんまと本気にして今に至ります。

co-ba hiroshima 幸田さん(以下、幸田) 正直、サービス内容やビジネスモデルはどうでも良かったです。ただ彼からは熱く何かをやろうという想いが感じられました。

あとは、「そんなに今の会社が嫌なんだったら、辞めちゃえ辞めちゃえ」と言っていたら、本当に2週間後に辞めてきたので、全力でサポートをしようと思ったのもあります。(笑)

山本 まさに運命共同体ですね。(笑)

幸田 最近はオフィスも同じなので、近くで働き方をよく見ますが、周りの意見に左右されずに、自分のやり方でいつの間にかプロダクトを仕上げてリリースしている姿勢を見ると、熱い想いを感じますよね。

山本 遠回しに頑固と言われている気がしますが。(笑)

ーTAMENTAI GALLERYはどのようなサービスですか?

山本 TAMENTAI GALLERYでは、オンラインでアート作品を販売しています。

有名作家の作品を取り扱っているのではなく、地元で頑張って作品つくっていたり、これから作家を目指して頑張っている人の作品を中心に、取り扱っています。

作品を買う方のペルソナ設定は、コレクターではなく「アートは好きだけど、作品を買ったことはない」人たちです。そういった人達が気軽にアート作品を買える、敷居の低いサービスを目指しています。

また、オンライン上で作品を売っているだけではなく、オフラインでもアプロ―チをしています。

ーオフラインでは具体的にどのような取り組みをしていますか。

山本 そもそもオフラインを始めたきっかけは、「絵を買うのってすごいハードルが高いし、敷居が高いよね」といった課題を感じたからです。

絵を買ったことがない人がどうやったら絵を買うか考えたとき、最初はARを起点にして、スマホを壁にかざすと、絵がかかった状態を疑似的に再現できれば購入までのハードルが低くなると考えました。

ただ検証を進めるなかで、「この作品なんかいいな!」と思う出会いの場をまずつくる必要があると分かってきました。購買目的以外のシチュエーションで絵と出会う場をつくれれば、そこから購買にも繋げられると考えています。

なので現状は、「オンラインとオフライン」の2つの切り口でユーザーに購買を促す仕組みをつくっています。具体的には、オフラインでアート作品との接点をつくり、そこからオンラインでECサイトやAR、インタビュー記事といった手段を通して作品の購買してもらう設計です。

オフラインとオンラインを結びつける手段はQRコードです。作品の近くにQRコードを付けておき、見ている人が気になったタイミングでそれを読み込むと、作品の背景やストーリー、作家さんのインタビューがまとまったサイトに簡単に飛べるようになっています。

キーワードは「QRコード」

ー最近オフラインでイベントはされたりしましたか?

山本 つい先日までco-ba hiroshimaの廊下部分に、弊社で取り扱っている7名の作家さんの作品14点を、下にQRのキャプションを付けて展示しました。

よくある画廊との違いは3つあると考えています。

1つ目は、コミュニケーションのハードルを下げた点です。ひと言も話さなくともQRコードを読めば、他人に気を使うことなく自分のペースで、価格を含めその作品の情報を知れます。

2つ目は、展示作品のテーマの広さです。画廊で展示をする際は、多くの場合、展示テーマを元に設計します。しかし、今回は特定のテーマを設けず、抽象的な絵も具体的な絵も、書道も全て同じ場所に展示しました。

3つ目は、作家さんの作品のショールーミングの意味合いもあることです。作家さんは、昔つくった作品やコンペに出した作品を家に眠らせているので、そういった休眠資産を世に出す意味合いもあります。

これらの要素を兼ね備えたイベントを行いました。

アートが持つ力の側面

ー今回のイベントはアーティストの方がお金を払って展示しているのですか?

山本 送料は負担いただきましたが、基本的にお金はもらっていません。

今後は多少、お金をいただく設計になるかもしれませんが、いずれにせよ、画廊を借りるよりは安く、家に眠っている作品を世に出せますし、開催側も雰囲気を変えたり、新たな来場者を集められる世界をつくりたいです。そうするやって、出展側も開催側もWin-Winになる設計をしたいと思っています。

ーどういったきっかけで幸田さんのスペースでイベントをでやることになったのですか?

幸田 山本さんがオンラインでサービスを始めたと言われたときに、絵の質感など、目で見たものと写真では多少ずれがあるので、もっと身近に作品が見れる方がいいよねと話していました。

私が所属するco-ba hiroshimaは、いろいろな人に実証実験の場として貸し出すのをミッションにやっているので、山本さんにも場所をお貸ししました。そういう意味では、何か特別深い理由があったわけではありません。(笑)

ただ、実際にやってみると、会員さんから場が華やかになったと好評でした。始める前までそこまで意識をしませんでしたが、場の雰囲気が変えられるのはオフラインの強みだと思います。

展示を開始して、しばらくするとアートの存在に慣れてしまいますが、なくなった途端非常に寂しくなるんですよね。それだけ雰囲気を変える力があったんでしょうね。

山本 ユーザーが絵を買う目的は2つあると思っていて、1つは買った作品の作家さんが有名になり資産価値が倍増した際のリターンを狙う投資目的の購買です。

私の事業では投資でなく、日常の中にアートを溶けこませて楽しむのを目的にした購買に重きを置いています。そのため、キーワードの1つとして「愛着」を挙げています。

なくなった時の寂しさや、あった時の愛おしさを絵に対して感じるような状態をつくる手助けをしたいと思っています。今回のイベントではオフラインだからこそ、人に寂しさや華やかさなどの心理的な影響を与えることが改めて分かったので、その部分を今後はさらに引き出していきたいです。

(民泊の壁に絵を描く試みを実施)

視線の先は「海外」

ー他の絵を売っているECサイトや、オフラインでアート作品を展示している方との違いはどこですか?

山本 ここまでお話させて頂いたサービスの1つ1つは、すでに世の中にあると思いますが、絵との出会いから購入までを1つのサービスとして一貫して提供しているところはないと思います。まだ光を浴びていない作品に特化しているのもポイントです。

結局のところ、作品の購買に最も繋がるのは衝動買いだと思います。なので、ひたすらオンライン、オフライン関係なく作品と接する機会を増やしていくのが重要だと思います。そういった意味でも、オンライン、オフラインを一貫して提供する意味はあると思います。

ー国内だけではなく、海外の方も対象にしていく計画はありますか。

山本 それは大いにあります。今も民泊の壁に直接絵を描かせてもらい、その下にQRを設置して、海外の方に向けて、その方の作品を買える仕組みの実装を実験しています。

今後は広島の周辺だけでも瀬戸内国際芸術祭といった多くのアートイベントがあるので、そういったところとも一緒に仕掛けていきたいと思っています。

幸田 民泊だけでなく、カフェやコワーキングスペースも含めて、掛かっている絵が素敵だなと思ったら、描いた人の情報を気軽に知れたり、購買まで繋がる仕組みができたら素晴らしいですよね。

今回の配信からもご縁が生まれて、このサービスが広がっていけばいいと思っています。

山本 その場で購入までつながらなくても、その経験が頭の片隅にあることで、どこか別の機会で出会ったときに、「あっ!」となり、購買に繋がるのが理想です。

このサービスを通して、そんな世界を実現していきたいです。

文・写真:ami編集部

過去の記事はこちら


嬉しいグォー!これからも応援よろしくグォ!
16

ami

起業家と未来の仲間をつなげる「ami」の公式noteです。 https://ami.live

amiライブ note

「起業家とサポーターがつながるライブアプリami」のライブ配信の様子を書き起こし、編集してお届けします。
1つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。