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「気をつけなかったから悪い」はナンセンス。防犯を妨げる認知の歪みへの挑戦

Moly河合さん(@sorai33)のamiライブ配信の書き起こしです。

株式会社Moly CEO 河合 成樹さん

amiファシリテーター町田(以下、町田)
河合さんの配信を始めたいと思います。

Moly河合さん(以下、河合)
よろしくお願いします。

町田
amiライブの配信は3回目ですが、簡単にサービスの説明をお願いいたします。

河合
株式会社Molyの河合です。

防犯というセクションに絞った事業を、スタートアップでやっています。

簡単にいうと、防犯メディア「Moly.jp」というサイトと、

「Moly」という全国の事件情報を集めてユーザーに届けるアプリを展開しています。

それらに加えて、事件データを活用し、犯罪予測やIoTで地域の社会インフラ・街づくりのお手伝いをする事業もしています。

町田
前回は、具体的な取り組みを伺いました。今回はユーザーに向けた取り組みについて、お話を伺いたいと思っています。

最近はメディアに出られている機会も多いかと思いますが、それは河合さんの戦略なのでしょうか?

スタートアップが情報発信をする意味

河合
ついこの間まで、「プレスリリースもしない。Webサイトもまともに更新しない。何やっているか分からない。そもそも防犯もよく分からないし、こいつら何をやっているんだ」みたいな感じでした。

結論からいうと、企業にとって、とりわけスタートアップにおいては、広報や情報発信は成長に必要だと考えています。

サービスを持っている自分たちとしては、そこがすごく大事だと思って、一生懸命お話をさせていただいています。

町田
実際にメディアに出て、反響はどうでしたか。

河合
そうですね。「今まで分かっていなかったけど、ようやく分かった」みたいな声をもらいました。

たとえば、このamiの配信内容もこのあとnoteにまとめてもらい、テキストとして出るじゃないですか。それを見て、「ようやくお前の会社が何をやっているか分かった」と伝えてくれる人がいましたね。

そういうったものを見て、別の媒体で紹介できませんかというお話をいただいたり、テレビ出演のような話もあるので、積極的に発信していきたいと思っています。

町田
「情報発信をしていきたい」というところで、河合さんは今、防犯の情報も実際にメディアを使って発信していると思うんですけど、「Moly」で伝えている情報の価値は何になるんでしょうか。

河合
警察や自治体などが、「防犯の取り組み・情報発信・イベント開催」といったかたちで、住民の人や生活者に寄り添うというのも、もちろん1つの大事なチャンネルだと思います。

ですが、僕らがやってきて気づいたこととして、とくに皆さんが被害に遭いやすいのは、「機会犯罪」なんですね。駅から家に帰っている途中に襲われるとか、ひったくりに遭うといった犯罪です。

そういった犯罪に対して、「どういうふうに対処していけばいいのかな」とか、「どうやったら遭わないですむのかな」といった知識は、あまり伝わっていないですね。

そもそもアンケートをとっても、「どういうことを気をつけていますか」と聞くと、一番多い回答は「気をつけてない」というもの。

僕らもいろんな防犯のサービスをつくってきたんですけど、一番必要なのは、「その情報を届けてあげる」こと。それがすごく大事なんです。

自治体や警察より、僕らのようなIT系の会社が、メディアを分散型にして、テキストや動画を出していく方が広く届きやすいと考えています。

町田
コメントに「ジオフェンシング」とありますが、これはどういう意味ですか?

河合
防犯にいくつか要素があるということは、前回お話したと思うんですけど、その中でも「ジオフェンシング」とは、「領域性」の話なんですね。

こうやって、今、町田さんとすごく近いじゃないですか。

それでもし、町田さんが不審者だったらめっちゃ嫌ですよね。

簡単にいうと、その「距離感の間にどういう障壁をつくるか」というのが、「ジオフェンシング」の考え方なんですね。

それは「家」もそうです。たとえば、「塀をつくる」「ドアをつくる」「窓を工事する」「見通しを工夫する」といった対策は全部「ジオフェンシング」。

※編集者注:ライブ中では「ジオフェンス」は「障壁をつくる」という文脈で使用されていますが、本来は「スマホやビーコンなどの位置情報を使った見守りや侵入検知の仕組み」の意味になります。

それも3段階ぐらいあって、「ここまで入られたらちょっと気をつけよう」「ここまで入られたらヤバい」「ここまで入ってきたらとにかく逃げるか守ろう」みたいに、段階があるんですね。

それについても、「こういうことに気をつけていきましょう」みたいに、アドバイスができる状況を作る必要がある。

たとえば、とくにお金を持っている人たちであれば、お家にホームセキュリティーを入れたりすると思うんですよ。それでもホームセキュリティーの世帯普及率は、全国で3%程。

つまり、ほとんどの人は対策をしていないということなんですよね。

お家に対しての対策でさえそうなのだから、移動している自分に関してはほとんど知識がないということ。それをみんなに届けるってすごく大事だと思います。

最終的には防犯のサービスや、ほかの仲間が取り組んでいる防犯ソリューションにつなげていくことで、自分たち1社だけでは絶対に解決できない部分までやっていきたいなと思っていますね。

町田
さくまさんから、「なんで犯罪を防ぐことが語られる機会が少ないんだろう?」と質問があります。

「犯罪」に対する認知の歪み

河合
そうですね。日本は安全だという神話があるということも1つ理由だと思います。でも、女性の方にいろいろ話を聞くと、6割以上の人が危険な目に遭ったことがあると言うんですよ。

つまり、それが周知されていない。

今僕らは男同士で防犯の話をしているけど、犯罪に遭ったことはほとんどない。おそらく、男性の方はほとんど遭わないでしょう。

もう少し突っ込んで考えると、その事実が、社会の認識にそのまま紐づいてくるんじゃないかと思っています。

結局は声をあげられないんですよね。被害申告率というデータがあるんですけど、それは16%程度で、20%を切っているんです。

ということは、実際には申告した人の5倍の人が本当は犯罪に遭っているはずなのに、そういった声が出ていないということ。

警察関係者の中には、「申告率は10%を切っているんじゃないか」という人もいるぐらいなんです。

表沙汰にならず、世の中にあまり知られないという仕組みになってしまっている。

町田
そういう声を届けるという意味でも、「Moly」を発信する意義があるんでしょうか。

河合
はい。今、「自分が悪いと思ってしまいそう」というコメントがあったんですけど、これは僕らも本当に悩んでいることです。

「気をつけてね」と言って行動の変容を促すのは、実は間違っているところがあると、一部分では思っています。

最近、自己責任というキーワードが挙がる風潮がありますが、たとえば「女性が夜出歩くのは駄目だ。それでも夜出歩くのは自己責任だ。」と言われたとしますよね。でも、花見で夜桜見たいときもあるじゃないですか。

そういった言い方は、人権を侵害していると思うんですよ。

本当はそうではなく、犯罪をする人を減らしていく、犯罪が発生しないような場所をつくっていくといった方向性が大事なはずなのに、なかなかそこまで至らない。

だから仕方なく、否応なしに、という葛藤の中で、「女性の方々はこういうことに気をつけてくださいね」という情報を送っていますね。

町田
やっぱり多くの人が自分が悪いと思ってしまう。

河合
そうですね。「自分が気をつけてなかったから悪い」とか、そんなことは全くない。

100:0で、悪いことをやった人が悪いんです、本当は。

だけど、ちょっと言い方が悪いんですが、「男性の認知の歪み」みたいなものが社会にはびこっている。

そこまでいくと、教育論やいろんな話になると思うんですけど、あと2時間ぐらいしゃべりそうなので。(笑)

町田
もう1つ、河合さんにお話を伺いたいと思っていたのが、情報発信について。

やはりスタートアップは人数も限られていて、情報発信にはコストがかかる。それは人員的にも、時間的にもそうですよね。

それでも情報発信をする意義については、どうお考えですか。

河合
会社の事業によって違うと思うんですけど、僕らは「メディアをやる」という覚悟を決めているので、情報発信は絶対必要だと思っているんですね。

最近はfacebookなどで「自社メディアを始めました」といった投稿を見かけますよね。

そういった取り組みは、「自分たちの存在を知らせることで、自分たちを成長させる」という意図や、Webサイトだけでなく様々な媒体で情報を発信しないと、世間に分かってもらえないという背景もあると思います。

世間には思ったよりも全然分かっていただけないんですよ。それで「自分たちはこういうことをやっているんです」って言い続けるわけですね。

たとえば「僕らはメルカリです」というレベルになれば、もちろん、「メルカリね」という話になると思うんですが、「Molyです」って言われても、「何ですか」みたいな話になるわけですが、そこを埋めていくには自分たちが発信していかないと届かないと思います。

情報発信は、スタートアップにはすごく重要だと思うんですよ。

町田
さくまさんが、「ストーリーを発信することはスタートアップの仲間集めに本当に重要だと思う」とコメントしています。

河合
そうですね。「仲間集め」もすごい大事だし、本当に、それを見てくれて、話がちゃんとできる機会を持てることは非常に大きいことだと思いますね。

たとえば、こういうライブ配信もそうだし、テキストもそうですね。

町田
男性の思考が偏っていることも原因の1つじゃないか、という話がありましたが、よしたかさんのコメント、「男性にこそ発信が届いたほうがいいのかも」というのはどうでしょうか。

河合
それもあると思いますね。うちはもう、「女性向けの防犯メディア」と絞っていますが、記事そのものに関してはニュートラルに読めるようにしています。

今後は拡散できるよう、いろんなところに記事を出していく予定なんですが、多くの人に読んでもらえるようにしたいですね。

防犯については、みんなが思い込んでいる壁や固定観念がたくさんあるので、それを少しずつ変えていくことをやっていきたいですね。

町田
実際に、僕も全然こういう防犯に対する話を聞いてこなかったんですよね。

河合
被害に遭った人がどれぐらいいるかとか、女性がどういう目に遭ったかという話は、ほとんどが伝わっていない。

僕は、こういう仕事をしているから聞きやすいということはあるんですが、皆さん、そもそも聞きにくい話題ですよね。

いきなり隣の人には聞けないですけど、日々出会う女性の方から、自分はそういう話を聞くんですよ。

おとといなんて、「歩いていたら、ひったくりにあって、後ろからコンクリートで殴られて、流血して意識が一瞬飛んだ」人の話とか。

生々しい話なんですけど、そういう話を聞くと、「これはやっぱりおかしいな」と思うわけです。僕ら男性はそんな風には襲われないですよ。

「弱い人だと思って、その人を襲う人がいる」という世の中の歪んだ構造があるので、そこを変容させていく手伝いを僕たちは少しでもしていきたい。

社会全体で取り組んでいく問題だと思いますが、僕たちもやっていきたいと思っています。

町田
ということで、ぜひ続編もamiで話していただきたいと思います。

河合
防犯について、世間に知られていない問題ってたくさんあるので。たとえば、防犯カメラはたくさんつけても襲う人は減らない問題とか、そういった話もあります。

町田
ぜひ、続編でその話題についても配信していただければと思います。ありがとうございました。

河合
ありがとうございました。

過去の配信はこちら


嬉しいグォー!これからも応援よろしくグォ!
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2019年11月15日amiはINITIALに生まれ変わりました。スタートアップの今と未来を徹底解説。資金調達をはじめとした定量面での分析情報、起業家や投資家への独自取材による充実のコンテンツをお届けします。https://initial.inc/
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