20181122_ムスカ流郷さん串間さん

「20年間365日をハエに捧げた」起業家とハエが変える、未来の食の選択肢

本記事は、MUSCA流郷さん(@Ayanorobo )、串間さんのamiライブ配信の書き起こしです。

左 : 株式会社ムスカ 代表取締役暫定CEO 流郷 綾乃さん
右 : 株式会社ムスカ 代表取締役会長 串間 充崇さん

amiファシリテーター町田(以下、町田)
先日、TechCrunchで優勝されたMUSCAの串間さんと流郷さんにお越しいただきました。

よろしくお願いします。

MUSCA 串間さん(以下、串間)
よろしくお願いします。

町田
まず、MUSCAはどのようなことをされているのかを教えていただけますか。

串間
ひと言で言うと、昆虫テクノロジーです。

インセクトテクノロジーとも言いますけども、昆虫の力を利用して有機廃棄物といったゴミからタンパク質と有機肥料をつくるという仕事をしています。

町田
そのサービスでは、具体的にどういう課題を解決できるんですか?

串間
まず、ライブを見ている方がどれだけタンパク質危機についてご存知かどうか。タンパク質危機って知らないですよね?

われわれの技術というのは、タンパク質危機といわれる社会課題を解決する技術になっていますので、まずはタンパク質危機を理解していただく必要があるかと思います。

「タンパク質危機」は簡単にいうと、2025年~2030年にかけて世界のタンパク質の需要が供給を逆転するということです。

最短で7年後には世界的にタンパク質が足りなくなってくるという未来が、予想されているということです。

これは非常に危機的な状況です。日本はご存知の通り、食料自給率が低いですし、皆さんがいつも食べられている肉や魚のえさもタンパク質でできていますので、そのえさも枯渇してしまうという未来が、統計上予想されています。

そういった未来の課題を解決できるのが、われわれMUSCAの技術だと思っています。

町田
具体的には、ハエを用いた技術を使っているんですけども、ハエに最初に出会われたきっかけのお話って伺ってもよろしいでしょうか?

「イエバエ」研究の長い歴史

串間
話は旧ソ連の45年前に遡ります。45年前にソ連が火星への有人宇宙飛行計画を立てていたんですね。

往復すると4年かかる計算でしたが、4年分の水、酸素、食料、全てを持って行くというのは物理的に不可能だったので、宇宙船内でのバイオリサイクルをする必要がありました。

世界中の微生物だとか藻だとか昆虫を一生懸命、当時の天才科学者たちが調べた結果、世代交代が早く管理が比較的容易なイエバエ、「housefly」が選ばれたんですね。

そのハエを選別交配を重ねることによって、サラブレッド化された能力の高いイエバエ種の改良を進めてきたというのがおおもとになります。

われわれが20年前に、その技術をロシアから引き継いで、日本国内で研究開発を現在まで続けてきたというのが、開発の経緯になります。

20年前の時点でタンパク質危機に貢献しようとか、世界の飢餓人口を減らそうとは全く考えていなかった、というのが正直なところです。

人口の爆発的増加といった社会的背景がわれわれに追い風になってきたというか、タイミングがたまたま一致したという言い方が正確ですね。

町田
20年もの間、串間さんはずっとイエバエの育成などに携わってきたんですか?

串間
そうですね。(笑)

イエバエというのは、飼育を続けないとその種の血統が途絶えてしまうので、正直言って、20年間365日一切1日も休みはなかったです。

それをやってきたということですね。

町田
365日24時間、働き続けることの一番の動機は何だったんですか?

串間
イエバエの研究は、やっている作業はシンプルなんですけど、人手やお金がけっこうかかるんですよ。

毎月数百万かかる費用の捻出も非常に大変でしたし、本当に何度も辞めようと思ったんですけど、ハエの能力が世間に広まったときに、ものすごく役に立つということは分かっていたんですよ。

「これは人類を救う技術だ」という確信だけは、もう10年ぐらい前から強くありました。

ハエを途絶えさせてしまうのは、子どもや孫の世代に対して申し訳ないと思いましたし、「このハエだけは残さないといけない」という義務感が強くあったので、がむしゃらに守ってきました。

町田
具体的に、これまでで一番つらかった出来事はなんでしょうか?

串間
本当にお金がなかったということですね。1つの例は、電気が止められそうになるわけですよ、電気代が払えないので。奥さんや子どもと一緒に住んでいる自宅の電気が止まりました。

家の電気ですよ。家の電気が止まるんですよ。ライフラインが!(笑)

でも、ハエの研究所の電気だけは止めなかったという、そういうエピソードもあります。

流郷
家族よりもハエ!ということですね。

串間
はい。家族には申し訳ないです。

町田
次に、流郷さんにも話を伺いたいと思います。流郷さんはもともと広報、PRの仕事をされていたと思うんですけども、串間さんとはどういうきっかけでお会いしたんですか?

虫には無縁でも、MUSCAに参画したわけ

流郷
株式会社MUSCAの立ち上げ時に出資をした会社があり、その会社の執行役員をずっとやっていました。

そこから出向になり、執行役員としてMUSCAの広報を担当するというかたちで最初、串間と出会ったんですけれども、正直な話、「なんで私にハエの案件が来るんだ」と最初は思ったんですよね。

もうちょっと、かわいい製品の広報をやっているほうがいいじゃないですか。

もともとロボットやAI、シミュレーション技術といったテクニカルな分野の案件がきていましたが、「最後に来たのはハエかよ!」とは思いましたね。

代表取締役になった今でも、カブトムシすらカッコいいと思えないぐらい虫が嫌いなんですよね。

そんな私が、今年の7月に代表取締役に就任させていただいたのは、やっぱり串間が先ほど言っていた思いやスケール感も含めて、この技術を社会に絶対に残していかなければいけないと思ったからです。

私にも子どもが2人いるんですが、子どもたちが80歳ぐらいになれば、孫もいるでしょうし、もしかしたらひ孫がいるかもしれない。

そんなときに、昆虫食がメインディッシュとして出てくる世の中にしていきたいのか、と思ったんですよ。

たとえば、お金持ちであれば肉は食べれるけど、隣のテーブルの人は昆虫食がメインディッシュだという状況を考えると、食の選択肢がないという状況は残しちゃいけないと思った。

昆虫、魚、お肉、その中で食べるものを選択できる世の中を残したいなというので代表になったという経緯ですね。

町田
串間さんは虫はお好きですか?

串間
僕も個人的には、昆虫食としてのセミやバッタは苦手です。できれば食べたくないですよね。

町田
2人とも僕の印象としては、アグレッシブに新しいことをどんどんやられているなと思うんですけど、昔からそういった特徴がおありだったんでしょうか?

串間さんからお伺いします。

串間
中学生ぐらいの頃を思い出すと、新しいことにチャレンジすることが好きだったと思います。

町田
具体的に、チャレンジングだったエピソードはありますか?

串間
中学校を卒業するときに、友達だけで自転車で九州一周企画立てたんですが、周りのお母さん方に怒られてしまった。「危ない、危険だ」といわれましたが、それでも自転車で1泊旅行をしたんです。

そういうチャレンジングな、冒険的なことは前からやりたいタイプだったと思います。

町田
達成することが好きだからそういうチャレンジをするんですか?

串間
何かにチャレンジしたあとの、やり切った感や、一緒に達成した仲間との絆を1回知ってしまうとまたやりたくなる、そんな感じでしょうか。

町田
流郷さんはいかがでしょうか?

流郷
自分ではそんなにアグレッシブだとは思っていないんですが、町田さんはそう思うってことですか?

町田
新しいことに挑戦するイメージはありますね。

流郷
たまたまいろいろな選択肢が迫ってくるので、その選択肢をいい方向性に行くようにしているだけで。その選択肢が特殊なだけなんですよね。

私自身は自分のことをけっこう普通だと思っていて、特殊な選択肢の中でしか選ぶことができなくて、その結果選んだのがハエだったということですね。

町田
会場やライブに参加されている方、何か質問あったりしますか?

質問1
一番困っていたときに、お金を出してくれた方はどういった関係だったんでしょうか?

串間
基本は、親、兄弟、親戚。そして今でもたくさんお世話になっている起業家の先輩方に、本当に頭下げて借りたというのが正直なところです。

それでもすべて借り尽くしてしまって、どうしようか本当に本当に困っていたときに、MUSCAを一緒につくることになった株式会社ベイシズとの縁があったので、やっていてよかったなって思った瞬間でしたね。

町田
「TechCrunchの反響はどうですか?」という質問が、フルノさんから来ています。

流郷
TechCrunchの反響、すごくありましたね。リクエストメッセージが増えました。(笑)

ホームページ上の問い合わせも質が高いものといいますか、投資案件をベースにしたものが増えましたね。

串間
あとは友達申請が増えた。

流郷
友達申請も増えました。友達申請してくれるのはいいんですけど、メッセージぐらい入れておいてくれないと、正直誰か分からないことがありますね。

町田
さまざまな反響があったということですね。(笑)

最後になりますが、MUSCAのプロダクトを使って世の中を変えていきたいというパッションは、2人とも共通して持たれているところなんですかね?

プロダクトで世界を変える

流郷
そうですね。今年の7月、代表取締役になるという話があって、その時点でいろんな決断がありました。

うちの会社は畜産糞尿とか生ゴミといった有機廃棄物の処理ができるので、就任してからは「ハエ社長」とか、言いたい放題言われるわけですよ。

そう言われると少し傷つきますが、社会や地球が抱えている問題を解決できるのがMUSCAのシステムや事業だと思っています。

それを早く解決して、世界が抱えている食料危機や飢餓の問題を少しでも改善できるようにしたいとは思いますね。

串間
もう1つ付け加えるとすると、MUSCAのシステムが日本・世界中に普及すると、普段皆さんが食べている食品が安全なものがより多く提供できるようになります。

今の食物連鎖の中には化学的なものや薬的なものがたくさん含まれていますけども、実はMUSCAの有機肥料を使うと、かなり簡単にオーガニックの農業ができるようになるんですね。

そうすると、オーガニックのお米が安く普及するようになったり、トマトやピーマンといった食卓に上る野菜などの肥料になります。

タンパク質のほうでいうと、抗生物質を減らした水産養殖や、鶏肉をつくることができるので、オーガニックの鶏肉やオーガニックの魚が食卓にたくさん並ぶようになるんですね。

そういった安全なものをできるだけ子どもたちにたくさん食べさせたいと思っているので、早く普及させる義務があると思っています。

町田
まだまだお話、聞きたいことあるんですけども、次回の放送でMUSCAの実際の、どういうことをされているのかというお話をお聞きできればと思います。

ありがとうございました。

串間・流動
ありがとうございました。


嬉しいグォー!これからも応援よろしくグォ!
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2019年11月15日amiはINITIALに生まれ変わりました。スタートアップの今と未来を徹底解説。資金調達をはじめとした定量面での分析情報、起業家や投資家への独自取材による充実のコンテンツをお届けします。https://initial.inc/
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